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俺はなんだかんだで結構な奴らに嫌われてると思う。元から俺の現在の家はそんな好かれとらんかったらしい、失脚を狙おうと嗅ぎまわる奴らばっかや。不幸中の幸いは、俺がなり代わっとる息子は俺と瓜二つやった事と病弱過ぎて公にもだせへんかった事や。バレた所で俺は隣国のスパイちゃうし、あんな国滅んでええと思っとるから、今はこの国に従じてますー的な事言っとけば大体黙るやろ、黙らんかったら殺るからええねん。でもそんな俺の元にいるのはきっと黙らせきれんやろうな、という最悪の駒たち。俺の兄弟。
「君がこんなに立派になってるなんて思わなかったよ」
「アッチを出て何年経ったと思うとるん?」
「月日の流れは本当に無常だよ、クルゥエル」
かつて自分を救い、自分を絶望の淵へと叩き落とさんとした兄。隣国の天才科学者。俺が偶然脱国してきた兄を捕らえた時はかつての狂気なんて存在しとらんかった。ただ、兄は笑ってた。「久しぶりだね」ってな。そしてこう言っとった、「俺を自由にして、それが君への贖罪になるなら何をされても構わない。でも弟は君の側においてやって欲しい、知識は全て教えたから君の役に立つはずだ」ってな。だから俺は、俺の兄弟をこの家に置いてやる事にした。「誰もが驚く位の新薬開発せぇ、そんで俺の家を潤すんがアンタの仕事や」そう言った時の兄の複雑な表情、俺が簡単に殺すとでも思うとるんか?天寿をまっとうするまでアンタには償ってもらうで。そう俺は笑った。
隣国の科学者を置く事に多くの奴らが反対しとった、だから俺は目の前に兄が作った薬を叩き出した。「隣国以上の技術を手に入れんと、勝てへんの。わからん?勝つためだったら俺はなんだって利用するで。文句あるならこれ以上のモン作ってみぃ」そう言って。なんで俺こんな奴の為に頑張っとんのやろ?って思ったけどまぁ、なんだかんだで兄弟やからやな、で落ち着いた。兄は今立派なロリコンいやいや天才科学者になって、俺や実験体にされとった他の奴らを元に戻す薬を開発しとる。俺は別にこのままでええんやけどな、若いままやし便利やし。
「クルゥエル、最近騒がしいみたいだ」
ぽつり、と兄が呟いた。その顔は結構シリアス、これは何かヤバイ事が起こる前やないの?
「何処が?」
「隣国の方がね、とても騒がしいみたい」
パペット達がおびえているんだ。と奴は元実験体の心配しとった。俺はその時俺(の外見年齢)と同じ位の少女を思い出した。半分成功半分失敗な実験体らしい、今や兄の立派なボディーガードとして俺に襲い掛かってくるアイツがおびえてるなんて笑ってまう。
「クルゥエル、きっと君は戦争が起こったら最前線を志願するだろう?」
「何言うとるん?辺り前やろ」
「そういう所は俺の兄にそっくりだね」
「……」
「きっと近々争いが起こるよ、クルゥエル」
兄は複雑な顔で笑った。
「そしたら君はきっと、俺の兄に会うよ。サルベジアは君とそっくりだからね」
サルベジア、コイツの双子の兄。俺もよう覚えてる、何考えとるかわからんアイツ。兄を溺愛し過ぎて頭おかしいんちゃうかと思う位。兄の復讐相手を兄の目の前で抹殺した、兄を狂わせる引き金を引いたのはアイツ。兄はアイツの事心配しとるけど、俺はアイツ嫌いやねん。別にどうでもええわ。
「だとしても、俺は全力で行くで」
「分かってるよ、君はもう隣国の人間じゃないからね。それはサルベジアも分かってるはずだから」
「ちゃうわ。俺、アイツ嫌いやねん。狩ってもええ?ええやんな?俺は狩るで」
「相変わらず俺の答えは求めてないんだね、君は」
ふふ、と兄は笑った。
「俺は一応学者だから、戦場以外でサポートする事にするよ」
「もったいないわ、アンタ俺以上に強いんやから」
「そんな事ないよ」
切れると片手で人の頭握り潰せる奴が言う事かい。そう言ったら兄は忘れてよーと唇を尖らせて言った。残念ながらしっかり覚えとるで、狂っとる時に研究に文句言ってきた奴の頭握り潰したん、俺はちゃんと見た。その話をするとやめてー!と怒るから黙っとく事にする。
「クルゥエル様」
召使いが息を切らして飛び込んできた、聞けば今すぐ騎士団に来いとの伝令だという。
「今行くわ」
たまの休み位ゆっくりしたいわーとため息をついた。全くなんやねん、どんだけ働かせれば済むんや、給料あげてくれ、ホンマ。文句言ったってしゃーないし、渋々行く準備をする事にした。
「気を付けてね、クルゥエル」
のんびりと兄が言う。
「お互いさまやで、シュアラスター」
そして俺は、兄の言葉が的中していた事を知った。