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―――最前線。
戦いは激化している。
先頭を走り、兵を統率する中隊長クルゥエル。彼は今酷く苛立っていた。
思っていたよりも敵が強い。臨機応変に作戦を変え、全ての物事に対応出来る柔軟性、敵の頭は相当優秀な人物である事がクルゥエルには良く分かった。だが、自身も負ける訳にはいかない。戦況は五分五分、どちらも引かない。
相手はただ国へ迫ろうと特攻をかけてくる、後衛に控えるグレールの隊の作戦を成功させるにはこれ以上進ませてはならない。ついでに数を減らせればこちらのものだ。しかしクルゥエルはある考えが頭の隅にちらついていた。
『あちらの隊長はもしかしたら―――』
「っ!?回れ!!ボンっ!!」
閃光が空を裂き、クルゥエルと騎獣であるボンを狙った。間一髪直撃は避けたものの、カァン、と甲が吹き飛んでいった。
まるで雷のようなその魔法に、クルゥエルは覚えがある。同じく騎獣であろうサザンドラに乗って現れた人物に「やっぱりな」と舌打ちした。
「なんや、やっぱりお前か。シュアラスターを取り戻しに来たんか」
「この国にとって、大切な存在だからね」
相手の男は、ただ不敵に笑った。
「誰が渡すか、アホ」
忌ま忌ましい、と言うようにクルゥエルは言葉を吐き捨てハルバードを向ける。相手もまた、腰に差していた剣を引き抜きクルゥエルに向けた。
一陣の風が吹く。
次の瞬間には鉄を打ち付け、擦りあわせる嫌な音が響いた。
「竜の血の加護を受けた同胞であっても、容赦はしないよ。ヴァリアシオン国最高薬品研究者、シュアラスターを返して頂こうか―――クルゥ」
「お前と同胞なんてヘドが出る、竜の血なんぞとうの昔に捨てたわ。返す言うわけあらへんやろ、さっさと去ねや―――サルベジア」
――――最前線、兄と弟の戦いが始まろうとしていた。
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