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うばああああああああああって書いてぷしゅう…ってなりましたちょい短めの小説。
いつぶりに書いたかさえも記憶にございません、はい。不完全燃焼感が半端ないですが、これ以上書くとめっちゃ長くなる気しかしなくてですね…
コハクさんVSシュアさんのおはなし。


コハクさんお借り致しました!書かせて頂きありがとうございました!






 彼は、彼の戦いは、一つの美しい芸術品だ。 繊細とは言えない、丁寧とも言えない、むしろ荒削りで、洗練などされていないものだ。しかし打ち出してくる技の一つ一つはしっかりと完成していて、これ以上手の加えようも、直しようもない、すでに一つの型として完璧に完成している。 
そしてそれはただ一つの目的のために造られている。「人を殺すため」の技だ、それ以外の何ものでも無い。彼の拳は内臓を破裂させ、彼の爪は動脈を切り裂き、彼の剣は骨ごと体を斬る。こうして彼と立ち合ってみて思う、彼のこの強さの根本を求めたい、学者故の探究心。何故、どうして、こんなにも、粗暴で、大雑把で、お世辞にも出来た人間とは言えない彼が、「何故こんな素晴らしい形として完成されているのだろう」と、解明したいとは思わないかい?
彼の心情など俺には知った事では無い、俺が知りたいのは「この完成された強さ」についてだけだ。幾度となく拳を受け、流し、避けてきたけど、その実力はまだまだ未知数だ。何故なら彼は手加減をしているから、まだ彼にとっては俺との戦いは「お遊び」なんだろう。それは俺が本気を出していないというのがわかっているからだ。俺が本気を出していない事を見抜いている、それは少々気に食わない所ではあるけど、その感情に任せて実力を示そうとする程俺は真面目な人間じゃあない。逆に何でわかるんだろう、とまた一つ問題が提議されるだけの事。俺のやることはその過程を考える事だ、解答をいきなり出してしまっては退屈なだけ。でも敢えて言うなら、「並外れた戦いに対する本能」というものだと思う。
でも今はその提議よりは、「彼の完成された強さ」について考える方が楽しいというもの。現段階での予想では、俺と彼の実力は同等。そして戦いに決着が着くとしたら「彼が死ぬべき時か俺が死ぬべき時、もしくは両者とも死ぬべき時」だけだと思う。この予想は殆ど確信に近い、だからこそノロノロと引き伸ばしていたい。一気に研究して一気にわかっちゃうなんてつまらないじゃない。面白い事はずっとやっていたいと誰だって思うでしょう?いいじゃないか、彼だってとても面白そうなんだもの。
 色々と思考をしていたら頬を爪が掠めて行った。そろそろ思考を戦闘に向けていこうか。提議は家に帰っても出来るが、分析とデータの収集は今、この立ち合いの場でしか出来ないんだから。目の前の彼は「ぼんやりしてたら殺すぞ」と言わんばかりにニヤリと笑っている。
 
「ねぇ、面白そうだね団長サン?」
 
ポン、と顔の横にある爪を叩いて距離を取った。彼は常に楽しそうだ。幼い子供が蟻を嬲り殺して遊ぶのとどこか似ている。残酷な無邪気さだ、でも嫌いじゃない。「自分が正義で相手が悪だから殺す」なんてアホな奴らよりは、純粋に無邪気に力でねじ伏せるという人の方が好ましく思う。
 
「今日は使ってこねぇのか、アレ」
「アレってなんのことかなぁ?」
 
この間うっかり使ってしまった魔法の事だろう。魔法を使った時の彼の満足そうな顔をふと思い出す。彼は俺のこのうそっぱちのツラの皮を剥いでいって、俺の実力をどんどん剥き出しにしていくのを楽しんでいるフシがある。そして、それにあわせて自分の実力を露見させていっている。研究者としてはデータが集まるんだからとても喜ばしいことなのだけど、俺としてはそれは、ちょっとだけ気に食わない。たまには俺の方から彼の力を剥がしにかかってもいいんじゃないかな。
 
「…うん、気が変わったよ」
 
俺の一言に、彼はまたニヤリと笑った。何が出てくるだろうか、何が出てこようが叩っ斬ってやるよ、無言でそう語る彼はどこかワクワクしているような素振りも見える。でも、あまり待たせたらきっと彼は俺を切り裂きに来るだろう。時間にして3秒、それ以上はアウトだ。でもそれでいい、それで十分だ。パンッ、と手の平を合わせ、簡易詠唱で一気に術を練る。ここまでで約1.5秒。
バッ、と手を開いて術を解放すれば、頭上に現れたのは数十もの小型隕石群。ここまでで2秒。
真面目に詠唱していれば何百何千もある大型隕石群位は出てくるんだけど、こればっかりは仕方ない。本気でこの術を使ったら、騎士団を壊滅させる自信がある。
 
 
「彗星よ、降り注げ」
 
 
3秒。俺が最後の言葉を唱えたと同時に彼は駆け出していた。一直線に彼に向かって降り注ぐ、大人の頭程ある石の塊。技を見切る事に関して優れている彼でも、こんなに速く、こんなに多くもの全てを見切る事は困難だろう。さぁ、彼は一体どうするのだろうか、どうやってこれをくぐり抜けて俺に迫ってくるのだろうか、ワクワクしてきている自分がいる。
一方の彼は避けるまでもない、一直線に隕石群に、俺に向かってきている。頭に当たれば確実に頭蓋骨が砕けて脳味噌が飛び出すだろう、普通の人間は恐怖して逃げ惑う、しかし彼は恐怖するでもなく、ただ一直線に突き進んで来ている。彼が普通ではないことは重々承知していたが、まさか、降り注ぐ隕石群に突っ込んでくるとは!
 
「普通は隕石群に突っ込むなんてバカな事する人いないよ?」
 
降ってきた剣を飛んで避けながらそう言えば、掠り傷だらけの顔で彼はニヤリ、と笑った。彼は本当に面白い、彼と戦う度に彼の戦闘データはどんどん良い方向へと上書きされていく。少しだけ、『あの薬』を彼に使ったらどれだけのバケモノが生まれるだろうか、と考えたけど、きっと彼はそれを望む事は無いのだと思う。あくまで仮定として、俺の頭の中で留めておくことにした。
 
「本当、君は面白いね」


 
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